結論
- 1ヶ月当たりの医療費の支払いには上限がある
- しかしキャッシュバックには3ヶ月程度かかる
- 申請すれば最初から上限で済むようになる方法もある
- 最低限の貯蓄があれば保険は不要
保険屋さんに駆け込むその前に
- 怪我をした時
- 病気になった時
- 事故に遭った時
- 災害にみまわれた時
など、漠然とした不安については深く考えることを放棄して
何か不幸が降りかかった時にその負担を少しでも減らしたいと考える
とても自然なことです。
しかしそこでいきなり保険屋さんに相談するというのは
かもねぎ
になってしまっているかもしれません。
何かがあった時は
- 公的保障がどれぐらいあるのか
- 公的保障でどれぐらい足りないのか
を考える必要があります。
今回は病気や怪我で医療費が高額になってしまった場合に使える
高額療養費制度
についてみていきたいと思います。
そもそもどういった制度なのか
そもそも高額療養費制度とは
医療費による家計負担が重すぎることがないように1ヶ月で支払う上限額を決めましょう
というものです。
年齢や所得に応じて上限額は変わってきますが
医療費の負担が重すぎて医療が受けられません
ということがないように
安心して医療が受けられる社会を維持する目的で定められています。
※平成29年8月から70歳以上の上限額を段階的に見直しが行われています。
上限額の設定
上限額は年齢と所得によって異なります。
70歳未満の人の場合
区分 | 所得区分 | 自己負担限度額 |
---|---|---|
ア | 年収約1160万円〜 健保:標準報酬月額 83万円以上 国保:旧ただし書き所得 901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
イ | 年収約770〜1160万円 健保:標準報酬月額 53万~79万円 国保:旧ただし書き所得 600万円~901万円超 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
ウ | 年収約370〜770万円 健保:標準報酬月額 28万~50万円 国保:旧ただし書き所得 210万円~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
エ | 〜年収約370万円 健保:標準報酬月額 26万円以下 国保:旧ただし書き所得 210万円以下 | 57,600円 |
オ | 住民税の非課税者等 | 35,400円 |
70歳以上の人の場合(外来だけの上限額も設定されています)
所得区分 | 外来(個人ごと) | 外来・入院 (世帯ごと) | |
---|---|---|---|
現役並み | 年収約1,160万円~ 標報83万円以上/課税所得690万円以上 | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | |
現役並み | 年収約770万円~約1,160万円 標報53万円以上/課税所得380万円以上 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% | |
現役並み | 年収約370万円~約770万円 標報28万円以上/課税所得145万円以上 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% | |
一般 | 年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満等 | 18,000円 (年間上限14.4万円) | 57,600円 |
住民税非課税等 | II 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
住民税非課税等 | I 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) | 8,000円 | 15,000円 |
※ただし入院時の食事負担や差額ベッド代は医療費に含まれません
更に負担を軽減する仕組みとして
多数回該当
があります。
これは
過去12ヶ月の間に3回以上上限に達した場合は4回目から上限額が下がる
というものです。
具体的には
70歳未満の場合
所得区分 | 多数回該当の場合 |
年収約1,160万円~の方 | 140,100円 |
年収約770万~約1,160万円の方 | 93,000円 |
年収約370万~約770万円の方 | 44,400円 |
~年収約370万円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 24,600円 |
70歳以上の場合
所得区分 | 多数回該当の場合 |
年収約1,160万円~の方 | 140,100円 |
年収約770万~約1,160万円の方 | 93,000円 |
年収約370万~約770万円の方 | 44,400円 |
~年収約370万円 | 44,400円 |
※「住民税非課税」の区分の方については、多数回該当の適用はありません。
高額療養費制度を使うには
申請方法は?
では高額療養費の支給申請はどのように行えば良いのでしょうか?
これはとても簡単です。
加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出または郵送する
これで申請は完了です。
(どの医療保険に加入しているかは、保険証の表面て確認してください)
ただし病院などの領収書の添付を求められる場合もあるので無くさないようにしましょう。
医療保険によっては、「支給対象となります」と支給申請を勧めたり、 さらには自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするところもあります。
支給の対象になるものは?
保険適用される診療に対して支払った自己負担額
これが対象となります。
対象外となるものを具体的に挙げると
- 医療にかからない場合でも必要となる「食費」・「居住費」
- 患者の希望によって サービスを受ける「差額ベッド代」・「先進医療にかかる費用」
これらは高額療養費の支給の対象とはされていません。
支給までにかかる時間は?
結論は
受診した月から少なくとも3か月程度
と考えていただきたいです。
思ったより時間がかかるように思われますが仕組みとして仕方がないところがあります。
高額療養費は、申請後、各医療保険で審査した上で支給されますが、この審査はレセプト(医療機関から医療保険へ提出する診療報酬の請求書)の確定後に行われます。
このようにレセプトの確定までに一定の時間がかかるので3ヶ月程度はかかると考えたほうがいいと思います。
そこで医療費の支払いが困難なときには、無利息の「高額医療費貸付制度」 を利用できる場合があります。
制度の利用ができるかどうか、貸付金の水準はどのくらいかは、加入している医療保険によって異なりますのでお問い合わせください。
支給申請はいつまでさかのぼれるか?
高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、
診療を受けた月の翌月の初日から2年
となっています。
最初から高額療養費制度を使うことはできないの?
自己負担限度額を超える分を初めから立て替えなくてもいい方法はあります。
それが、事前に「限度額適用認定証」または「限度額適用・標準負担額減額認定証(住民税非課税世帯の場合)」を入手しておく方法です。
それを医療費の支払時に窓口で健康保険証と共に提示することで、窓口での支払いが自己負担限度額までで済むようになります。
ちなみに70歳以上の住民税課税世帯であれば、限度額適用認定証を入手しなくとも健康保険証と高齢受給者証を一緒に提示するだけです。
まとめ
公的保障でかなりのバックアップがあることがわかりました。
- 医療費は1ヶ月の支払い上限金額が決められている
- 3ヶ月程度でキャッシュバックされる
- 事前申請で3ヶ月待つ必要なし
など、とても手厚い保証があります。
これらを踏まえて
- 保険に入る入らない
- 入るなら保証はどれぐらい必要か
を考えることが大切だと思います。
皆様の保険選択の一助になれば幸いです。